日本料理海外普及人材育成事業実施要領

農林水産省
平成26年2月14日 公表
平成29年8月29日 改訂

第1 目的
この要領は、日本食及び食文化の海外への普及を促進するため、農林水産省が実施する日本料理海外普及人材育成事業(以下「本事業」という。)に関して、その実施に必要な事項を定め、もって我が国における本事業を適正かつ円滑に実施することを目的とする。

第2 用語
この要領で使用する用語は、以下のとおりとする。
1 「取組実施機関」とは、調理師法(昭和33年法律第147号)第3条第1項第1号の規定による厚生労働大臣又は都道府県知事の指定を受けた調理師養成施設のうち、次の要件を全て満たし、本事業により日本食及び食文化の海外普及の人材育成に必要な事務を実施するものをいう。
(1) 本事業に係る実習計画の策定及び実習計画に基づく活動の実施に必要な事務を行う人員が確保されていること。
(2) 健全かつ安定的な経営状況であると認められること。
(3) 職業安定法(昭和22年法律第141号)に基づく職業紹介の許可を受けていること又は届出を行っていること。

2 「外国人調理師」とは、取組実施機関において、調理師たるに必要な知識及び技能を修得し、調理師免許取得資格を得た者のうち、次の要件を全て満たし、取組実施機関の推薦を受けて特定日本料理調理活動を行うものをいう。
(1) 取組実施機関において日本料理の調理の業務に従事する調理師たるに必要な知識及び技能を修得し、成績優秀かつ素行が善良であること。
(2) 日本料理の知識及び技能を高めようとする意思、及び帰国後、日本食及び食文化を世界へ発信する意思を有すること。
(3) 特定日本料理調理活動への従事を開始する時点で満18歳以上であること。

3 「受入機関」とは、次の要件を全て満たす本邦の公私の機関であって、外国人調理師を雇用契約に基づく労働者として受け入れ、日本料理の調理に係る業務に従事させ、1の取組実施機関と連携して当該外国人調理師に専門的な知識及び技能を修得させる公私の機関をいう。
(1) 外国人調理師が日本料理の知識及び技能を修得するため、実習計画を適切に実施できる事業所(以下「事業所」という。)を有していると認められること。
(2) 健全かつ安定的な経営状況であると認められること。
(3) 労働関係法令及び社会保険関係法令を遵守していること。
(4) 過去三年間に外国人の受入れ又は就労に係る不正行為を行ったことがないこと。

4 「特定日本料理調理活動」とは、農林水産省による実習計画の認定に基づいて、当該機関の出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号。以下「入管法」という。)別表第1の5の表の下欄の規定に基づき指定した活動であって、当該指定において特定された受入機関との契約に基づき、かつ、特定された事業所において調理に関する技能を要する日本料理の調理に係る業務に従事するものをいう。

第3 人材育成の対象とする日本料理
第2の4に規定する調理に関する技能を要する日本料理は、日本標準産業分類(平成21年3月23日総務省告示第175号)における日本料理店(細分類番号7621)、料亭(細分類番号7622)、そば・うどん店(細分類番号7631)、すし店(細分類番号7641)、お好み焼・焼きそば・たこ焼き店(細分類番号7692)及び他に分類されないその他の飲食店(細分類番号7699)に該当する事業所で提供される料理又は飲食料品であって、日本食及び食文化の海外普及に寄与すると認められるものとする。

第4 実習計画の策定及び認定
1 取組実施機関及び受入機関は共同で、外国人調理師の日本料理の知識及び技能の修得に係る実習計画を策定し、受入機関ごとに別記様式第1号により、農林水産省に申請し、認定を受けなければならない。実習計画は次の事項を含むものとする。
(1) 日本料理の知識及び技能を修得するための計画及び施設に関する事項
(2) 日本料理の知識及び技能に係る修得状況の評価に関する事項
(3) 在留中の住居の確保に関する事項
(4) 外国人調理師が母国に一時帰国可能な程度の休暇の取得に関する事項
(5) 日本料理の指導員及び生活指導員の任命に関する事項
(6) 報酬及び労働・社会保険への加入等を担保する財産的基盤に関する事項
(7) 外国人調理師との面接及び外国人調理師からの生活・労働等に係る相談への対応(苦情処理を含む。)並びに監査の実施に関する事項
(8) 外国人調理師の帰国旅費の確保その他の帰国担保措置に関する事項
(9) 特定日本料理調理活動の継続が不可能となった場合の措置に関する事項

2 農林水産省は、1の申請があった場合、次に掲げる要件をいずれも満たしているときは、実習計画を認定することができる。
(1) 計画の内容が期間全体を通じて効果的な日本料理の調理技能の向上が図られることが確実と認められること。
(2) 調理師の調理技能を必要としない業務又は同一の作業の反復のみによって修得できる調理業務に従事させるものでないこと。
(3) 日本料理の知識及び技能に係る修得状況の評価について、その実施体制、方法、実施項目等が適切であると認められること。
(4) 日本料理の知識及び技能を修得するための期間を五年以内としていること。
(5) 特定日本料理調理活動を行う外国人調理師の受入れを行う事業所が明確となっており、受入れ人数を一事業所当たり二人以内としていること。
(6) 外国人調理師が、特定日本料理調理活動に日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
(7) 外国人調理師が取組実施期間中において、取組実施機関、受入機関から保証金などを徴収されないこと及び労働契約の不履行に係る違約金を定める契約等が締結されていないこと。
(8) 取組実施機関が、第8に定める監査を継続的に実施できる能力及び体制を確保していること。

3 農林水産省は、実習計画を認定したときは、別記様式第2号の1により取組実施機関及び受入機関に対し通知するとともに別記様式第2号の2により外国人調理師に通知するものとする。

第5 実習計画の変更
1 特定日本料理調理活動において、第4の1に定める申請に係る事項に重要な変更が生じた場合、取組実施期間及び受入機関は共同で、別記様式第3号により農林水産省に速やかに申請し、承認を受けなければならない。
2 農林水産省は、1の申請があった場合、当該申請内容が外国人調理師の日本料理の知識及び技能の修得に資すると認められるときは、実習計画の変更を承認することができる。
3 農林水産省は、実習計画の変更を承認した場合には、別記様式第4号の1により取組実施機関及び受入機関に対し通知するとともに別記様式第4号の2により外国人調理師に対し通知するものとする。

第6 特定日本料理調理活動の実施
1 受入機関は、実習計画に基づき、定期的に外国人調理師の日本料理の知識及び技能の修得状況を確認し、当該外国人調理師の習熟度に応じた適切な指導を行うよう努めるものとする。
2 受入機関は、外国人調理師の実習日誌を作成し備え付け、特定日本料理調理活動終了後1年以上保存することとする。

第7 修得状況の評価
1 取組実施機関は、受入機関の協力を得て、少なくとも1年に1回、外国人調理師の特定日本料理調理活動を通じた日本料理の知識及び技能に係る修得状況を評価し、その結果を別記様式第5号により農林水産省に報告することとする。
2 農林水産省は、その結果を踏まえ、当該外国人調理師が特定日本料理調理活動を継続することの適否を判断し、その結果について、別記様式第6号の1により取組実施機関に対し通知するとともに、別記様式第6号の2により受入機関及び外国人調理師に対し通知するものとする。

第8 監査
1 取組実施機関は、次に掲げる事項について、少なくとも6月に1回、受入機関又は事業所(外国人調理師に対し法務大臣が入管法別表第1の5の表の下欄の規定に基づき指定した活動において、特定日本料理調理活動を行うものとして特定された事業所をいう。以下同じ。)に対し監査を行い、その結果を当該受入機関又は事業所の所在地を管轄区域とする地方入国管理局(以下「管轄地方入国管理局」という。)に報告するものとする。
(1) 適正な実習の実施に関すること。
(2) 適正な労働条件の確保に関すること。
(3) 安全性の確保に関すること。
(4) 雇用保険、労働者災害補償保険、健康保険及び厚生年金保険への加入に関すること。
(5) その他農林水産省が必要と認めること。

2 受入機関は、1の監査があったときは、別記様式第7号により取組実施機関に外国人調理師の受入状況を報告するものとする。

3 取組実施機関は、2の報告があったとき、監査の結果を踏まえ実習計画に即した特定日本料理調理活動が実施されるよう必要な措置を講じるとともに、別記様式第8号により農林水産省に外国人調理師の受入状況を報告するものとする。

4 農林水産省は、必要と認めるときは、1の規定にかかわらず受入機関又は事業所に対し自ら監査を行う又は取組実施機関に監査を行うことを指示することができる。

5 農林水産省は、1又は4に定める監査において、外国人調理師の受入状況に関する是正が必要と認めたときは、当該是正を必要とする事項について取組実施機関及び受入機関に対し報告を求め、必要な措置を講じるものとする。

第9 外国人調理師との面接
1 取組実施機関は、第7に定める修得状況の評価及び第8に定める監査を補完するため、特定日本料理調理活動の実施状況等について、必要と認めるときは外国人調理師と面接し当該実施状況等を確認するものとする。

2 受入機関は、取組実施機関が前項に定める面接をするときは、面接が円滑に実施できるよう協力しなければならない。

第10 帰国旅費の確保その他の帰国担保措置
1 取組実施機関は、外国人調理師が帰国旅費を支弁できないときは帰国旅費を負担しなければならない。
2 受入機関は、1の場合において、取組実施機関がやむを得ない理由により帰国旅費を負担することができないときは、当該外国人調理師の帰国旅費を負担するものとする。

第11 特定日本料理調理活動の継続が不可能となった場合の措置
1 取組実施機関又は受入機関に起因する理由により実習計画に従った特定日本料理調理活動の継続が不可能となった場合において、外国人調理師に責がなく、かつ、本人が継続して特定日本料理調理活動の実施を希望するときは、取組実施機関はあらかじめ特定日本料理調理活動の継続に必要な措置を講ずるほか、新たな受入機関を確保するよう努めるものとする。
2 1に規定する場合(取組実施機関に起因する場合を除く。)において、外国人調理師が特定日本料理調理活動を継続する場合、取組実施機関は、新たな受入機関を確保し、あらかじめ別記様式第3号により農林水産省に申請し、承認を受けなければならない。
3 農林水産省は、2の申請があった場合、当該内容により、特定日本料理調理活動が適切に継続されると認められる場合は、実習計画の変更を承認することができる。
4 第5の3の規定は、3の場合に準用する。

第12 実習計画の認定取消
1 農林水産省は、受入機関に対し第8の5の措置を講じたにもかかわらず必要な改善が認められない場合には、当該受入機関において外国人調理師が特定日本料理調理活動に従事する実習計画の認定を取り消すものとする。

2 農林水産省は、受入機関又は外国人調理師が第2の2及び3に掲げる要件のいずれかを満たさなくなったときも前項と同様とする。
3 1及び2に規定する場合にかかわらず、農林水産省は、取組実施機関が認定に係る実習計画を実施することが適切でないと認めたときは、実習計画の認定を取り消すことができる。

4 1及び2の規定により実習計画の認定を取り消した場合のうち、外国人調理師及び取組実施機関が第2の1及び2に掲げる要件を満たすことに変更がない場合、取組実施機関は当該外国人調理師に係る実習計画を再度作成することができるものとする。

第13 農林水産省への報告
1 取組実施機関は、次に掲げる場合は、その状況を速やかに別記委様式第9号から第13号までにより農林水産省に報告しなければならない。
(1) 外国人調理師の特定日本料理調理活動が終了し、帰国した場合
(2) 外国人調理師が帰国した後、日本料理の海外への普及に係る業務に就業した場合
(3) 外国人調理師が第4の1(4)に定める休暇を取得した場合
(4) 特定日本料理調理活動において、第4の1に定める申請に係る事項に変更が生じた場合(第5の1の規定に基づき申請する場合を除く。)
(5) 実習計画に即した特定日本料理調理活動が実施されていないことが判明した場合
(6) 特定日本料理調理活動の継続が不可能となった場合
(7) 外国人調理師又は受入機関が第4の2に掲げる要件を満たさなくなった場合
(8) その他特定日本料理調理活動の実施状況等に関し報告が必要であると農林水産省が認める場合

2 取組実施機関は、特定日本料理調理活動の終了後においても、農林水産省が必要と認めるときは、当該外国人調理師の海外における日本食及び食文化の発信の状況について、農林水産省に報告しなければならない。

第14 関係省庁への報告
1 取組実施機関は、次に掲げるときは、速やかに管轄地方入国管理局に報告するものとする。
(1) 農林水産省により実習計画の認定を受けたとき。
(2) 農林水産省により実習計画の変更の承認を受けたとき。
(3) 第13の1に掲げる場合が生じたとき。
(4) 農林水産省により実習計画の認定を取り消されたとき。

2 取組実施機関は、本事業の実施状況等について、必要に応じ、管轄地方入国管理局又は厚生労働省担当部局に報告するものとする。

第15 海外での日本料理普及活動従事のための支援
1 農林水産省は、取組実施機関からの報告に基づき外国人調理師の実態を把握し、取組実施機関、受入機関に対し、日本食及び食文化の海外普及を図るため、必要な指導、支援等を行うものとする。

2 農林水産省は、取組実施機関から第13の1の(1)による報告を受けたとき、特定日本料理調理活動を終了した外国人調理師に関する情報を特定非営利活動法人日本食レストラン海外普及推進機構に通知することができる。